追試対象とした論文

Buunk, A. P., Park, J. H., Zurriaga, R., Klavina, L., & Massar, K. (2008). Height predicts jealousy differently for men and women. Evolution and Human Behavior, 29(2), 133–139. https://doi.org/10.1016/j.evolhumbehav.2007.11.006

先行研究の知見

男性の身長は魅力、優位性、生殖の成功と関連している。そのため、背の高い男性は嫉妬が少ない可能性がある。
また、女性の身長は健康や生殖の成功と二次関数的な関係があり、平均的な身長の女性が有利である。そのため、女性の身長は嫉妬とも二次関数的な関係がある可能性がある。

Buunk et al. (2008) では、以上の仮説を検討するために、オランダ人の成人のサンプルを集めて、身長と嫉妬の経験頻度を尋ねました。
その結果、
①男性の身長は自己報告による嫉妬と負の相関があること
②女性の身長は嫉妬と二次関数的な関係があること
がわかりました。

本研究は、このBuunk et al. (2008) による結果の頑健性を確かめることを目的としました。

方法
調査手続き・参加者

インターネットのリサーチモニタに登録されている成人を対象に、オンラインにて質問紙調査を実施しました。
Buunk et al. (2008) のStudy 1で報告されている相関係数をもとに検定力分析を行い、今回は364名のサンプルサイズが必要であることを確認しました。
そこで、今回の調査では400名をのサンプルを得られるように調査を行いました。調査の結果、合計441名分の回答が回収できました。
身長について、日本人の男女別の平均値から3標準偏差以上離れた値を回答した者は不誠実な回答として扱い、該当者をデータの分析から除外しました。
合計424名の回答データをもとに、男女別で、身長と嫉妬の経験頻度の関連性を分析しました。

測定した項目
  • 回答者の身長 (cm)
  • 嫉妬の経験頻度を「あなたはどのくらい嫉妬しやすいですか?」という質問文で尋ね、回答は「嫉妬しない」~「極めて強く嫉妬する」の6件法で尋ねました。
結果
男性の嫉妬と身長の関係

先行研究に反して、男性では嫉妬と身長の線形関係は見られませんでした。
身長と嫉妬の経験頻度の間の相関係数はr = 0.11 (p = 0.12) となり、統計的に有意な相関は確認できませんでした。
以下の図は、男性の身長と嫉妬の経験頻度の散布図です。

女性の嫉妬と身長の関係

先行研究に反して、女性では嫉妬と身長の二次関数的関係は見られませんでした。
身長の2次の項までを入れた重回帰分析を行ったところ、1次の項・2次の項ともに、偏回帰係数は統計的に有意にはなりませんでした (B = -0.61, p = 0.24 [1次の項]; B = 0.00, p = 0.23 [2次の項])。
以下の図は、女性の身長と嫉妬の経験頻度の散布図です。

まとめ

以上のように、今回の調査では先行研究と同様の結果は得られませんでした。その理由として、次の2点が考えられます。

調査対象者の年齢の違い

年齢が上がるにつれ、人と比べたり人に嫉妬したりする頻度が少なくなります。
今回の調査の参加者の方々の平均年齢は、Buunk et al. (2008) のサンプルの平均年齢と比べ高かったです (Buunk et al. (2008) の論文:平均年齢33歳、今回の調査:46歳)。
このサンプルの人々の年齢層の違いが結果の違いに影響した可能性があると思います。

調査対象者の文化の違い

Buunk et al. (2008) の研究はオランダ人のサンプルを用いて行われたものでした。
一方、本研究は日本人のサンプルを用いて行われました。
このサンプルの違いによる文化的な背景の差が結果の違いに影響した可能性があると思います。

文責:石倉・高橋・福岡・三間・本水